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2015年10月12日 (月)

「如意(ねおい)の由来は朝鮮語」

糸島弁シリーズ百六十七。
『ねおいのかんのんさんの ねおいちゃ やっぱ にょいの なまりかいな』「ねおいの観音さんの如意(ねおい)とは、やはり如意(にょい)が訛ったんだろうか」

前回の残していた「ねおいは訛也」について考えてみましょう。一般的には「如意(にょい)が如意(ねおい)に訛った」と思われているようですが、個人的には別の考え方を持っていますので順を追って書いていきます。長文ご容赦。
ふたたび「筑前国続風土記二十二巻怡土郡」如意項目キャプチャ画像です(中村学園大学図書館電子アーカイブより)。

Fudoki_neoi_2

「俗にねをひと云は訛也」という青線部分に引っかかったのが「ねおい」由来調査の始まりです。
方言や訛りに対する考え方の一つに「しゃべりやすさ」、博多弁でいうなら「舌のまめりやすい方に言葉は変化していく」ということが基本にあるんですね。
作家の井上ひさしが[ニホン語日記:文藝春秋]で、『「口は怠け者である」との説に立ち、人間の発音器官にも経済原則が働いて「発音しやすい方が次第に本流を占 めるようになる」』としているんですが、これと同じ考え方です。
つまり、これが言語・方言・訛り方の大原則だとすれば、『「にょい」が「ねおい」と発音しにくい方に変化していくのは話が逆やろもん』というわけです。筑前国続風土記の貝原益軒先生に恐れ多くも異を唱えとるとですね。

ところで、「根生(ねおい)」という漢字違いで同じ発音の言葉があります。
【根生(
ねおい)】1:草木などの根が生え育つこと。2:生まれた土地で成長したもの。土地っ子。はえぬき。3:うまれつき。うまれついての家柄。家筋。素性。4::歌舞伎で、その土地に先祖代々住み、常にその土地で人気を得ている役者(日本国語大辞典より一部省略)という意味です。

筑前国続風土記にあるように、「元々古寺の跡に如意輪 観音堂があり、後年そこに日蓮宗妙立寺を移した」という話ですから、その流れから「生え抜きの、あまねく崇敬を集め重んじ られる、名代の・・・という意味で、根生(ねおい)の観音さん」という語源説をまとめようとしていました。しかし、如意を根生由来とすると、今度は他の地方の如意を「にょい」と読む地名や如意輪寺の説明がつきません。それに違和感がありすぎますね。

では振り出しに戻りましょう。さきほど書いていた「古寺の跡」や「聖徳太子の御作」といった時代的背景を探ります。以下広辞苑とwikipediaの「聖徳太子」「仏教伝来」項目から引用。

【聖徳太子】遣隋使を派遣、また仏教興隆に力を尽し、多くの寺院を建立、「三経義疏さんぎようぎしよ」を著すと伝える(574~622)。

【仏教伝来(仏教の東方伝播)】仏教公伝(ぶっきょうこうでん)とは、国家間の公的な交渉として仏教が伝えられることを指す。上代の日本においては6世紀半ばの欽明天皇期、百済から倭(古代日本)への仏教公伝のことを指すのが一般的である。

【渡 来人の信仰】古代の倭へは、古くから多くの渡来人(帰化人)が連綿と渡来してきており、その多くは朝鮮半島の出身者であった。彼らは日本への定住にあたり 氏族としてグループ化し、氏族内の私的な信仰として仏教をもたらし、信奉する者もいたと思われる。彼らの手により公伝以前から、すでに仏像や経典はもたら されていたようである。522年に来朝したとされる司馬達等(止利仏師の祖父)などはその好例(引用終了)。

朝鮮半島からの渡来人とのつながり、あるいは仏教伝来伝搬の地となれば、糸島はその有力な資格地であることは間違いがありませんね。糸島地名(如意を含む)とその朝鮮語との関係を探ってみましょう。ただその渡来人が当時どのような言語(朝鮮語)を有していたのか、どのような発音をしていたかの証明はの筆者のような、ただの方言好きには無理難題というものです。ただし、とりあえずは必要な現在の糸島地名や日本語と韓国語との比較はできました。
検証はgoogleの日韓辞典翻訳サイトで行いました。音声も確認できます。リンクのURLが無効になるようなら、googleに「日韓辞典」と放り込んでみてください。ちなみに市販の中型版日韓辞典よりはこの翻訳サイトの収録語数の方がよほど上回っているようでした。

では、糸島の地名と韓国語読みを比較した図表です。

Gwan_eum

ほとんどが似ていますね。伊都・芥屋・波呂は朝鮮語読みと同じ。可也山も観音も「か」が「が・ぐぁ」になっただけです。では最後に結論らしきものをやはり図表でお目にかけましょう。「如意(ねおい)の由来は朝鮮語」の根拠にはならないでしょうか。

Yeoui_neoi

「yeoui」だけだと完全に証明できたとも言えそうですが、発音を聴くとちょっと微妙な感じもしますね。ただゆっくりと再生してみると、聴きようによってはたしかに「ねおい」と言ってるような気もします。新しい由来説の根拠が「気がします程度のもんかい」という突っ込みも来そうですね。ははは。

一般的には如意(にょい)が如意(ねおい)に訛ったと考えられているようだと書きましたが、時代的な流れを頭に入れると、やはり渡来人の信仰対象である観音とその言語であった「如意(ねおい)が逆に如意(にょい)と日本語化して来た」と考える方が適切ではないでしょうか。


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